目的不明の会議は中止しても問題ないは本当か?
多くの企業の課長さん達の悩みの一つに、自分が中心となって、会議の準備をしなければならないことが多いとよく耳にする。上司である部長や社長から指示が飛んでくる・部下からの依頼や相談が次々とやってくるといったなかで、準備をしなければならないと言う。
彼等には、会議の進め方であるファシリテーションスキルを学ぶ機会も与えられてもいると聞くが、「はっきり言って、研修で学んだことを全てやろうとなんて思ってはいませんよ。時間がないので。だから『やりやすそうなこと』とか『できること』しかやっていませんよ。」ともいう。
「朝から2本、お昼をはさんで、午後2本。しかもそのうち一つは本社まで1時間かけて移動しての会議なんて日もあって、明日の会議の準備もせんとアカンとなったら、もう残業確定。それで早く帰れと言われるんで、もう頭も身体も休みなし。毎月最低2日は、土日も返上せざるを得ない。会議だけでこれだから、これに部下への指示とか、育成とか考えていたら、いくら時間があっても足りない感じなんですよぉ。なんとかならんもんかといつも思ってますが、なんともならんのが現状なんですわ」
➽➽会議の3悪で進まない
➽みんなで会社を悪くしよう運動をしている?
会議がやたら多い会社は、現場が停滞気味で、業績もあまり芳しくないのが実情だ。
こういった会社の会議の捉え方が、そもそもズレているのだ。
そもそも会議がPDCAサイクルの中に置かれていないのだ。
普段のPDCAサイクルとは別の位置づけになっている場合が多々見受けられる。
PDCAサイクルが回らない状況を自分達でつくっていることに気づかないでいて、更にはPDCAを回している感覚で会議を進めており、「みんなで会社を悪くしよう運動をしている」ように見える。
こういった会社の多くの場合、報告だけの会議になりがちで、次へ進むための課題を明確にせずに、終わらせていることが多い。よく言われる「会議の3悪」以外の何物でもないことが起きているわけだ。
➽会議の3悪
さほど珍しいものでもなんでもない。若い頃には耳タコになるぐらい聞かされてきたことだ。軽くおさらいして思い出しておこう。
●会して議せず。---会議の集合時間に集まるには集まったけど、議論をしていないという状態。何のために、この出席者が集まっているのかをそれぞれが自覚していない状態でもある。
●議して決さず。---意見はそれぞれが出していたが、結論を決めることはなかったという状態。何のために、誰のために、結論を出すのかを出席者が自覚していない状態でもある。
●決して動かず。---結論を決めたものの、次の具体的な動きにつながっていないという状態。これも同じく、出席者が自覚していない状態でもある。
「議論をしていない」、「決めていない」「動きにつなげていない」を「議論ができなかった」「決められなかった」「動きにつなげられなかった」と解釈している人達もいる。これは受け身的で被害者的解釈だ。この解釈が変わらない限り、会議は永遠に自発的・自律的なものにはならない。
最近は、これに更に2つ加わり、「会議の5悪」とも伝えられている。
➽更なる2悪 (合わせて5悪)
「会議の3悪」に更に2悪をプラスしたものだ。この2つを足すことによって、会議そのものがPDCAサイクルで回っているし、普段の業務PDCAサイクルの中に位置づけられるものであることも理解できるだろう。
●動いて省みず。---動いたものの、その進捗や結果を振り返ることはない状態。つまり現状を正確に把握することは永遠にないと言える状態。
●省みて変えず。---反省点や改善点は見出しても、何も変えずにそのままにしている状態。目的を変えることはなくても方法は変える必要性が多々あるのに、変えないままなのだ。これは目標達成に向けて、汗と根性で成し遂げる道を選んだということを示していることも他ならない。
(2020.06.28追記)加えてウィズコロナである。会議体そのものを見直す良い機会である。
➽➽目的不明の会議は中止しても問題ないは本当か?
目的不明の会議は、中止してもなんら問題はないというのが私の持論だ。
もっというと会議のゴール(目標)も含めて不明な場合は、中止しても問題ないどころか、中止しなければならないとまで考えている。
それでは、結論を待っている現場が困るではないかというお叱りも聞こえてきそうだが、ホントに困ると思うのなら、結論を出せば済むことではないか。
結論を出さなくても、それでも現場は動く。それを知っているからこそ、結論を出さずにいられるということだ。単に甘えているだけの話しだ。正確にいえば、現場からブーイングが聞こえてくるのが困るということだろう。それは結論を出さない人の問題だ。
では、会議の目的というものは、どんなものがあるだろうか?
➽会議の目的は8つに分けられる
企業で行われている会議の目的を列挙すると、以下のようにおおよそ8つに分けられる。
会議の目的
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会議体(例)
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①問題・課題を整理し、明確にする
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◯◯連絡会議、◯◯協議会
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②新たな情報を共有化する
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◯◯説明会、◯◯連絡会議、◯◯研究会議
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③新たな知見を習得する
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◯◯研修、◯◯勉強会、◯◯トレーニング
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④解決策やアイデアを出す
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◯◯ブレストMTG、◯◯検討会議
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⑤モノゴトを意思決定する
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◯◯方針検討会、役員会議、幹部会議
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⑥負担を調整し、計画を共有化する
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◯◯連絡会議、◯◯計画会議、◯◯協議会
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⑦進捗状況を確認し、次の行動を促す
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◯◯協議会、◯◯報告会議
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⑧一体感を創り出す
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キックオフMTG、中間報告会議、成果報告会議
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ざっくり8つに分けてみたが、実際は目的別に会議をしているわけではない。
ひとつの会議体の中に、いくつかの目的が存在しているはずだ。
一つの会議体の中で、複数の目的と目標を設定することは、あまりお勧めはしないが、実際は時間に限りはあるので、上記の目的をどう組み合わせていくかを考える必要はある。
そして、これらの会議の目的には、その会議のゴール(目標)も必ずセットでついて来る。
例えば、①の場合は、今下半期で着手する課題、来期になってから着手する問題を決めることがゴールとなるといった具合だ。
例えば、④の場合は、すぐにできることは何か、半期であればできるものは何かを明確にすることがゴールとなる。
➽会議そのものを再検討する
今ある会議、これから設置しようとする会議が、どのような目的やゴールを持つのか?
これが明確でないものは、この記事のタイトル通り、「目的不明の会議は中止しても問題ない」
現場は変わらず動いている。それに甘えるわけにはいかないからこそ、会議の目的から見直し、意味のある会議に変えていくことが必要だ。
そのために、目的が不明な、曖昧な、不明確な会議は中止しても、問題が発生するわけではない。
新たに発生するとすれば現場からのブーイングだろう。
それで慌てて目的もゴールも曖昧なままやっても火に油を注ぐだけだ。
むしろ目的不明のまま会議を開催することが、問題を上塗りするだけでモノゴトが進まなくなるだけだ。わざわざ自ら時間の無駄を創り出す必要はまったくない。
ここで間違わないでもらいたいのは、必要性を再検討するのは、それを決めたリーダーだ。
再検討するために、メンバーを集めて会議をするというのは避けてもらいたい。
それは会議のための会議に他ならないからだ。
(2020.06.28追記)何度も言うが、加えてウィズコロナである。会議体そのものを見直す良い機会である。
➽➽疑問だけが残った会議を見学した
以前、クライアントの会議を数回見学させてもらったことがある。一切の発言をしないという立場での見学だった。この時に、よくある会議の姿を見た。上記の目的やゴールは明確であったけれども、いくつか疑問が残った。
➽会議にまつわるいくつかの疑問
①このメンバーによる会議である必要があるのか?
会議体によってメンバーを決めるのではなく、目的とゴールによって必要なメンバーを決めるようにしたいところだ。またメンバー選定にあたっては、その人でなければならない理由が明確であるかどうかを確認する。その人も参加してもらった方がいいだろうの「方が」レベルは極力なくす努力も必要だ。
本当に必要でないメンバーには、メールやグループウェアで共有することも切換えてもさして問題はないはずだ。
②この会議で出される価値はどれぐらいのものか?
これこそ出席するメンバーをしっかり見極めるためのものだ。
会議の価値はアウトプットだ。つまりは決定したゴールが明確であることだ。
もちろんそれは目的に沿ったものでなければおかしい。
これを単価✕時間で計算すればコストは出せる。
単価は人件費の時間単価として見る。時間は、会議の所要時間、移動時間、準備時間だ。
この掛け算の人数分の総和がコストとなる。
コストとゴールは、よく言われる「費用対効果」ではない。会議のゴールは「明確なゴールを決める」ことに価値がある。決めることがない会議はほとんどの場合、コストより価値は低いと考えて良い。
コストより価値が低い会議は、メールやグループウェアで共有することも切換えてもさして問題はないはずだ。
③この議題は何をするのか明確なのか?
議題の表記に「◯◯◯について」と見かけることが多い。これが事前配布資料の会議当日のアジェンダにそのように書かれている。これは連絡事項を聞くことになるのか?意見を求められるのか?そういった判断が読み手側に判断がつかないこともあり得る。議題は具体的にする。「◯◯◯の検討」「◯◯◯のアイデア出し」といった具合だ。もちろん最初から何度もしつこく言っているように、これに目的やゴールが書かれていることが前提だ。
④この議題に関して事前情報は共有されていなかったのか?
事前配布資料を持っている人と持っていない人がいた。事前に配布された資料を読んで考えた来た人とそうでない人の発言内容の差は明らかだった。資料に書いてあることを読まずに参加した人が、そのままのことを質問して、失笑を買っていた。役職的な立場を考えれば必要なメンバーであるので、職責に対する自覚を促す他にないだろう。
⑤この議題数に対する時間設定は適切か?
議題の数が多く、時間内に終わらなかったことも数回あった。ファシリテータ役の技量にもよるが、ここはリーダーが割愛するところを想定し、アジェンダづくりの段階で、議題の優先順位を指示しておけば済む話しだ。
(2020.06.28追記)
⑥リアルかオンラインかを判断する ウィズコロナの日々が続くなか、多くの企業はリモートワークへの切換えを進めるように舵をきった。支店や拠点間のマネジメント&コミュニケーションもオンライン化への切換えが進められている。三密回避が求められている以上、オンラインMTGは必須のツールでありスキルになっている。そう考えれば、リアルで会議をする必要があるのか、オンラインで会議をするのかの判断をすれば良い。空気を読むや顔色を伺うといった五感を駆使してリアルでしかわからないものが必要であれば、リアルのままにしておき三密回避に則った開催をすれば良い。五感を必要としないのであれば、オンライMTGに切換えるだけで、上記②の移動時間が大幅に削減できるので、コストは当然下がる。通信費が多少上がることになる程度だろう。
以上のように考えても、この記事のタイトルである「問い」に対する回答は、やはりこうなる。
「目的不明の会議は中止しても問題ないは本当だ。」
(2020.06.28追記)
ウィズコロナの日々が続いている。第2波も目前のようだ。リモートワークに切換えた企業は、オンラインMTGを活用することで、生産性向上を図れている一方で、従来のコミュニケーションとの違いで違和感を覚えているマネジメント層もいることも確かだ。これにより会議の生産性の差が出る。なんでもかんでもオンラインMTGに転換すれば良いというものでもない。メールで済むこともあるだろうし、電話で済むこともあるだろう。会議の目的とゴールをしっかりと決めて、ムダを減らしたいところだ。