思考中心の会議を短くする
先日、クライアントのマネージャから会議の進め方に関して書いてとリクエストがあった。このマネージャはどちらかというとベテランで、周囲からもアテにされているし、その自覚もある人だ。
そのマネージャが比較的新しいマネージャから「そういえば、教えてもらったやり方を思い出した」と言われたという。
どうも自身が学んだものと新しいマネージャが学んだものは大きな違いはないけども、微妙に違うところがあるようだ。そこに何かがあるのかないのか知りたいということだった。
➽➽会議の目的を再確認と事前準備がもたらすもの
問題を・課題を明確にする、新たな情報を共有する、解決策やアイデアを考える、モノゴトを意思決定する、・・・・など概ね8つの目的に分類した。
しかし、実際は、一つの会議体の中で、いくつもの目的が存在し、短時間であろうが長時間であろうが限られた時間の中で決定することは決定し、次に進まなければならないことには変わりはない。
加えてコロナ禍において会議のオンライン化が進み、会議に出席するための移動時間が大幅に削減された。これはこれで出席者側に立てばありがたいことだろう。
ありがたいことには違いはないが、その後のアクションが大切であることは変わらない。特に会議出席するために移動していた場合は、帰りの途上で、会議を振り返り、次のアクションを考えていたりするものだ。
これをやらない人は、オンライン化したところで、物理的移動がなくなったというだけで、そこに成長はあまり見られない。単にこなしているだけとなる。
またオンライン化をしていないとしても、会議ではマスクを着用している。
マスクをしたまま、長時間、思考することは結構しんどい。
酸素不足で頭が痛くなるのは気のせいだとしても、やはり短くはしていきたいところだ。
➽事前準備を促し短くなるきっかけをつくる
定例会議や連絡会議などの日時と内容が、ガチガチに決まっているものは別として、解決策やアイデアを練るための会議、進捗状況を確認し、次の行動促す会議であれば、オンライン会議に慣れて、これをうまく活用していくと、会議時間は短くなり、周期が早くなっていくものだ。
理由の多くが、時間的余裕が生まれたことによって、事前に通知されたアジェンダに沿って、事前に考えた上で出席するようになったからだ。
オンライン会議はリアルに比べて非常に疲れる。これが体感レベルで感じているからこそ、会議を早く終えるためには何が必要かを考えるようになったというところだろう。
実際、オンライン会議であろうが、リアル会議であろうが、会議は短いことにこしたことはない。
事前準備をしているメンバーが多いチームほど、会議進行は早く、意思決定、実行も早く、着実に成果が生まれていく。
では、事前準備が会議を一気に短くする魔法の杖となるかというと、そうではない。事前準備にもレベルというものがあるので、本当に短い時間で回りだすまでには、期間を要するものだ。
しかし一部大きく時間が短くなるものがある。
思考中心の会議が意外に短いものにできる。
会議といえば、時間と議題の数のバランスだとよく言われる。
まずここから考えてみることする。
➽➽思考中心の会議を短くする
思考中心の会議というのは、問題・課題を整理し明確にする、解決策やアイデアを練る、モノゴトを意思決定する・・・が3大思考会議だ。
報告・連絡的なものは、普段の報・連・相でなんとかなってしまうものだ。
もちろん一体感を創り出す目的の中間報告会議や成果報告会議などは別だ。
➽時間によって議題を設定する
会議を短かくしていくには、時間によって議題に優先順位をつけ設定していくのが単純でわかりやすい。これは定例的な会議であれば効果があるだろう。
しかし、ここには落とし穴があって、リーダーが「扱うべきこと」だけに集中しがちだ。メンバーの意思が反映されていない議題の会議は、当然モチベーションが下がり、集中度も下がる。
➽議題によって会議時間を設定する
反対に、「扱うべきこと」によって、会議時間を設定することもある。
検討時間が多く必要と判断される場合は、議題を絞り込み、会議時間を見込んで設定する。 しかし、これとて、リーダーが「扱うべきこと」を常に優先することに終始するので、やはりモチベーションも集中度も下がる。
➽「扱うべきこと」と「扱いたいこと」のバランスを取る
問題があるとすれば「扱うべきこと」の理由がメンバーに伝わっておらず、リーダーが一人で設定していることだ。
理由が伝わっており、「扱うべきこと」がメンバーにとって「扱ってもらいたかったこと」であれば、その議題はすでに共有化されたことになる。
この違いは大きい。
➽思考中心の会議を短くするためのテンプレート
以下は私が思考中心のプロジェクト会議で使うテンプレート
1.イントロ
1)まずメンバーが現在どんな位置にいるのかを確認する。
位置というのは物理的な場所のことではなく、感じていることだ。
確認方法は、全クライアントに共通するもので、いつもの質問と言えば「ああ、あれか」と思い出せるだろう。
一人ひとりに対してコメントをする時間的余裕があればする。 なければ、最後にまとめてコメントする。
コメント内容は、会議にドライブをかけるためのものであれば何でもいい。
2)本日の議題 議題は最大3つまで。事前通知を原則とする。
資料がある場合は、それも一緒に配布しておく。
3)追加の議題の有無を確認
事前通知した議題以外に「扱いたいもの」があるかどうかを確認する。
会議途中での追加もOKとする。
2.議題を順番に進めていく
必ずしも順番にやる必要はない。場合によっては飛ばす、割愛する、順番を入れ替えることも躊躇なく柔軟に行う。
議題ひとつひとつの終わりで、次回議題となるものを明確にしてから、次の議題に移る。
またどうしても事前資料を読み込む時間が取れずにいたメンバーがいることがわかった場合は、敢えて、そのための時間を15分~20分程度取ることもある。 これをするのは、あくまで足並みを揃えるためだ。
会議に入るセットアップができたところで、一つの議題に対して意見やアイデアを出し合っていく。
この時、考えてきたことをそのまま出してもらうことに集中する。
ジャッジしがちなので注意する。
また先に出た意見が優れている場合、後から意見を言うことになったメンバーは声を発することをためらうことにもなる。
これらを防ぐには、一つ目の議題に入ったところで、意見やアイデアを書く時間を設ける。そして書いたことをそのまま読む・見せるだけで良いと促す。
次にやることは、意見・アイデアを具体的にしていくことだ。
すでに具体的になっているものはいいとして、漠然としているものを具体的にする。これには5W2Hで見ていけば自然と具体的になっていく。
そうこうしているうちに、優れた意見・アイデアに集約されていく。
これはマジックでもなんでもない。
全てのメンバーの意見やアイデアをしっかり聞き、受け取るだけで集約されていくのだ。
結局、ジャッジすることはほとんどなくなっていく。
3.次回議題の整理と役割分担
上記の議題ひとつひとつの終わりで役割分担をせず、3つの議題を全て終了した時点で、次回議題を整理し、次回会議の開催日時を設定する。
もちろん次々回に回すものもあることが前提だ。
次回のアジェンダは、この時点で、ほぼできあがる。
その上で、次回の会議で、他に「扱いたいこと」の有無を確認し、必要であれば追加し、優先順位をつける。
最後に役割分担をする。この時、役割を果たす上で、期間的に余裕がなければ、その方面が得意な人に依頼する。 期間的に余裕があるのであれば、得意な人をアテずに、違う人が担当するようにする。
もちろんアドバイザーとして、得意な人に相談できるようにセットアップしておく。
そして最後に、どこに位置しているのかを質問する。
位置に関する質問は、最初か最後だけのどちらかでも良い。
このように進めていけば、たいてい、チームによる思考中心の会議は繰り返すほどに短時間になる。
実際、私が預かるプロジェクト会議は、議題3つで、その重さもさほど変わらないのに、6時間→4時間→3時間となり、コロナ禍でオンラインで実施するようになって、1時間30分まで縮まったチームもある。
結局、思考中心の会議を短時間でできるかどうかは事前準備としてメンバーが考えているかどうかにかかっているし、またそれに対するモチベーションもあるということだ。
また会議進行中では、メンバー全員が話ができる環境をいかに整えるかにかかっている。
上記のテンプレートでも割愛することもあるだろうし、もっと短時間で終えられるものもあるだろう。
いずれにしても会議進行スキルとしてのファシリテーションの目的=あくまで進行を介助することに立ち戻れば良いことだ。
最後にこのテンプレートが、リクエストしてきてくれたマネージャに役立てば嬉しく思う。