ハイブリッドワーク&マネジメントへのヒント8つ
冬場に向かって、インフルエンザと共に陽性者率が増加してきているようだ。今年の初夏以降、一旦職場での仕事を再開させた企業も、年末年始にかけて再びリモートワークを強化していくことになるかもしれない。多かれ少なかれ、そういう事態になっていくだろう。
今後の新型コロナ対策を考える上で、職場での業務再開とリモートワークのハイブリッド化は必須ではあるものの、中小企業にとっては、人材が不足していることやAIやRPAの導入が遅れていることもあって、リアルとリモートのマネジメントを切り替えるのが困難であるのが実情のようだ。
遠隔地である支店や事業所・営業所との会議などのコミュニケーションをオンラインですることがせいぜいで、実際のマネジメントそのものはあまり変わりはないとよく聞く。
それでは、遠隔地のメンバーとのミスコミュニケーションが起きることは否めない。それでなくても、ミスコミュニケーションは起きているわけだから、いわずもがな。
以前にも書いたことも含めて、この冬を迎え、乗り越えていくにあたって、リアルとオンラインでのリモートワーカーをどうマネジメントしていくかを改めてまとめることにした。
※今回の記事でのリモートワーカーは、特に注釈がない限り、在宅勤務者とは限らず、出社していてもリモートで仕事をしている人のことを指す。
クライアントには、一度に全てをできることを目指すよりも、ひとつずつ確実にできるようにしてもらいたい。
マネージャ(管理監督層)を中心に書くことになるが、一般社員やプロジェクトメンバーもお互い様という意味で理解と実践をお願いしたいところだ。
➽➽リモートワーカーの不満がそのまま解決策に直結する。
リモートワーカーの不満は、マネジメント側には見えにくい。リモートワーカーの不満は、ほとんどがコミュニケーション不足ということだが、これにともなって、マネジメントが機能していないということもある。
➽部下がマネージャにアクセスしにくいことが最も大きい問題
これは逆の立場でもよく聞く。お互いに顔が見えていないので、コンタクトが取りにくいという。電話であれば一方的なので気にせずかけているにも関わらず、オンライン会議という呪縛にかかっている可能性もある。
まず本当にオンライン会議の形態を取る必要があるものかをよく考えれば、そうでもないことも結構あるものだ。電話で済む場合もあれば、メールやメッセージ、チャットといったテキストコミュニケーションで済む場合もある。
●その辺については以前書いたので、それを参照してもらいたい。
ポイントはガチガチのルールにすることではなく、ゆる~いルールにしておくことだ。
コンタクトが思うようにできないことによって、何が起きるかを考えると、例えば、チームメンバーとのつながりを維持することを難しく感じてしまうことやマネージャ自身やメンバーのストレスを解消すること、勤怠管理、人事評価、チームのモチベーションを維持する、活発なミーティングの開催、進捗状況の把握、情報交換が難しく思えているのだ。
リモートワーカーの不満がそのまま解決策に直結するので、「何をすれば良いか?」自体はさほどわかりにくいことでもない。問題は「どう変えていくか?」ということだ。
➽➽ハイブリッド・マネジメントへどう変えていくか
➽1.まずは業務効率化を進めていく
リモートワークでやろうがそうでなかろうが、業務を効率化すること事態はいつもついてまわるものだ。ならば、上記の問題のうちのいくつかは、リモートワーカーがいなくても、「いる」ことが前提で考えておけば、ハイブリッドでの切り替えもシームレスなものを目指し、スムーズにできるようにする。
例えば、オンライン会議なのは最たる例だ。同じ社内であっても感染拡大防止の一環でオンライン会議ツールをつかって、各個人の自席から参加することも可能だろう。もう会議は会議室でやるものだという前提を捨てても良い頃だ。頭が固い人ほど、自席で話すものでないという固定観念に取らわれがちだ。実際は電話で話しているにも関わらずだ。
また勤怠管理や人事評価ツール、プロジェクトの進捗管理も効率的にできるオンラインサービスが、この半年間でたくさん登場したので、探せば、自社にあったものも見つかるだろう。
ちょっとしたプロジェクト管理であれば、エクセルやGoogleスプレッドシートであれば、無料で優れたテンプレートが山のようにある。
➽2.効率化の鍵=重要ではない仕事を減らす
リアルであってもオンラインであっても、重要でない仕事を減らす努力をしていない企業は、いつまでたっても効率化はできない。何も減らさず、何も変えずに効率化を図ることを要求される担当者にしてみれば、拷問のようなものだ。まるで永遠のデスマッチだ。
早急に業務の棚卸しをし、いわゆる「業務仕分け」をすれば良い。RPAなどの自動化ツールを使えるものは使っていけば良いし、RPAに至らなくてもエクセルのマクロなどを使えば、手間取っていたことも簡単にできることもあるので、調べてみるのは必須だ。
➽3.目標は曖昧にせず評価できるようにする
目標は目標でも、定性的な目標は、認識の違いにより解釈が変わり、アウトプットが違うものになる可能性がある。リモートワーカーとの目標設定は曖昧にしたり、定性的であるとすれ違いがあるので、可能な限り定量的な目標を設定しておく。
リモートワーカーがどれだけ頑張って、どれだけ努力したとしても、アウトプットが期待されるものでなかったら、それが評価されることは少ないし、マネジメントする側にしても評価しようがない。
そこで成果物や実績で評価される制度に切り替えている企業も多い。曖昧な目標設定や定性的目標は、お互い不幸になりかねないので、評価を適正に確実にしていくためにも定量的な目標が必要だ。とはいえ、定量的な目標だけに終始していると、関係性がギスギスすることもあり得る。大事なことは定性目標をどこまで定量目標に変換できるかを考えることだ。
➽4.プロジェクトの進捗状況を共有化する
共有するだけなら、オンラインツールを探して使うだけで良い。オンラインツールのほとんどは、共有することが前提になっている。
問題は「共有化」だ。つまり、共有した上でそれぞれのメンバーが「では、次に私は何をどうするか?」がそれぞれの意思で明確になっているかどうかだ。これにはオンラインツールでも共同作業ができるものを選ぶといいだろう。
共同作業できるツールであれば、上司がメンバーに直接的に教えている感覚も持てる。その上で同じオフィス空間で働いている時以上に、部下の進捗状況報告による共有と次の課題に向かう上での「共有化=次に何をどうするか?」を必ず行うようにしていきたいところだ。これはリアルだろうが、オンラインだろうが、同じフォーマットでできるだろう。
違いは、リアルの場合は口頭で済む場合が多いが、オンラインの場合はテキストコミュニケーションでやれば良い。どうしても確認が必要、共有内容の深堀が必要であるということなら、オンライン会議サービスや電話を使えば良い。
➽5.問題があっても解決策を求めない
メンバーがリモートワークで仕事をしていると、業務上の多くの問題に気づくことがある。リアルでは気づかなかった問題発生の兆候を発見したりすることが多い。それらは、マネジメント方法に起因することが多いのだが、マネージャがオンラインで進める事自体に躊躇していることや、前向きになっていない時だ。
こういったマネージャのやりがちなこととして、「このあたりは気になる。もしかすると大きな問題になるかも。」とメンバーが報告した場合、「では解決策を考えて提案してくれ」ということがある。
新型コロナの状況下では、問題に対して多くの人が明確な答えを持っているわけではない。ここで必要なことは、マネージャが「一緒に解決策を考えよう!」と投げかけ、共に進めることだろう。
問題が山積みになり最悪になる前に、解決するために適時フィードバックすることも忘れてはならない。細かすぎず適切に頻繁にフィードバックし、共に考えるスタンスを維持できれば、問題の山積みから来る大きな修正が回避できるようになる。そうすればチームとしての平穏に仕事に向かうことができるようになるだろう。
➽6.通信環境の問題をクリアできない人もいない人に解決策を提供する
リモートワークでは、通信環境や仕事をする環境をそれぞれに任されていることが多い。在宅勤務のリモートワーカは、仕事をする場所と家族と一緒にいる場所が一緒であったり、プライベートと仕事の切り替えが難しい場合がある。そういった人達は、仕事に集中しにくい状況にあるということを理解しておくことも必要だろう。
メンバーの仕事の進捗が遅いと「サボっているかも」と疑問が湧くこともある。メンバーにしても「サボっていると思われているかも」と思うこともある。お互い疑心暗鬼の状態になってしまうわけだから、ほうっておくと関係性はギクシャクしたものになっていく。これは避けたい。
マネージャとしては、通信環境や業務遂行環境に関してやりにくいことはないか、困っていることはないかをしっかりと確認し、メンバーの自宅近くのホテルやレンタルルームなどを借りる許可を出す必要もあることを知っておこう。
一方で、機材を会社が全て提供してくれることはもはや珍しいものになってきている。セキュリティツールの提供はあっても、PCやWEBカメラ、ヘッドセット、Wi-Fi環境は自分で用意することが前提になっている会社は多い。
これをとやかく言う人もいるが、電話は自前で用意するのに、PCなどの道具は会社が用意すべきという理屈は成りた立たないと言われても仕方ないだろう。会社都合で在宅勤務になったからといって全額会社が出す理由にはならないことも当然なのは、通信環境という意味ではなんら変わりはないからだ。
➽7.一人リンゲルマン効果を防ぐ
ハイブリッドマネジメントを目指す上で、これが最も影響が大きいものかもしれない。
多くの場合、リモートワーカーは、自身の判断で業務を進めていくことになる。そうすると、一人リンゲルマン効果によって思わぬ方向に進み、期待とは違ったアウトプットになることもある。
リアルの場合は、わからないことや迷うことがあれば、すぐに質問ができるが、リモートワーカーにとってはなかなかスムーズにできるものではない。特に在宅勤務のリモートワーカーにとっては深刻な問題に成りかねない。
そこで定期的なミーティング(オンラインでもリアルでも)をすることになるが、シームレスにやっていくことを考えれば、オンライン会議の定期開催は少なくし、こまめなフィードバックは、報・連・相と連動する形でテキストコミュニケーションで進める方がお互いに気が楽だと思われる。
あるいは、アウトプットやこれに伴うコンテンツと必要とされるプロセスが一定であるルーチン業務にすることで、安定性を確保することもできるだろう。ただし、この手のルーチンによって、メンバーの成長を図ることは困難であることを知っておこう。
また定期的なミーティングは、週の終わりに、具体的にストローク(肯定的なフィードバック)をする時間を確保することも忘れないようにしたい。
➽8.マネジメント・コミュニケーションでのオープンチャネル
議題がなくてもかまわない。ちょっとした雑談も必要だろう。そのためには、マネージャは、テキストコミュニケーションのチャンネルをオープンにしておくことが必要だ。テキストコミュニケーション上で、「これは話す必要がある」と判断した場合に、即座にオンラインや電話にすれば良い。こういったコミュニケーションチェンネルをオープンにすることで、頻繁なコミュニケーションで距離感を縮めることにもつながるだろう。
但し、オンライン上にお互いがいるということは、感情は複雑になりがちだし、いくら距離感を縮めるといっても、頻繁なやり取りを避けたいメンバーもいれば、マネージャのキャパ以上のやり取りをしたいメンバーもいる。お互いの立場を尊重しよう。
そういう意味では、マネージャは、チャネルをオープンにできる時間とそうでない時間を、共有カレンダーサービスなどを使って明示しておくことも求められるだろう。これは逆の立場でも同じだ。メンバーにしても、集中して業務を進めたい時に、いきなりマネージャから「調子はどう?」と割り込まれたら、鬱陶しいはず。
マネージャ自身の都合を開示し、メンバーにも都合を開示してもらって、つながっていくことで、信頼感を醸成することにもつながるだろう。
➽➽リモートワークのマネジメントでも、やはりコミュニケーションが重要
新型コロナへの対策でのリモートワークは当たり前に取り組めるようになった企業でも、実はもともと「働き方改革」としてリモートワークが要求されていたことを忘れていることが多い。これには会社としてのマネジメントを体系的に見直すことが必要なのだが、その前に新型コロナがやってきてしまって、リモートワークを前倒しにしたのは良かったのだが、そのままになっているのだ。
会社としてのマネジメント体系を整備し、今後もリアルとオンラインのハイブリッドマネジメントを確立することがいよいよ求められる状況になってきたと思える。
クライアントには、各社のハイブリッドマネジメントについて、共に考えていくことにしようと考えている。