「伝わらない」から抜け出す5つの鍵
プレゼンテーションについて、聞かれることが多い。
上手にやるにはどうすれば良いかというものだ。
よくよく聞いてみると、レベルは様々で、なおかつ相手は特定の人から不特定多数に至る。
これら全てをどうやれば、うまくできるのか?
全てうまくいく方法はおそらく、ない。
あるのは基本だけだ。あとはテクニックでしかない。
実はプレゼンテーションについて、うまくできない理由には共通点がある。
文字通り「説明するには?」「伝えるには?」「報告するには?」「発表するには?」「提案するには?」「心を動かすには?」「心をつかむには」・・・どれひとつとっても「自分」が主体になっていて、これらの言葉の前に必ず「上手く」「確実に」となんとも欲張りな言葉がつき、いろんな方法を試し、これじゃないこれじゃないと探している。
このような人は永遠に満足できる方法というものは見つからないだろうし、自分のプレゼンが伝わらないとずっと泣き続けることになるだろう。
➽➽「伝わらない」から抜け出す5つの鍵
確かにプレゼンテーションの範囲はどんどん広がっていて、報告レベルのものであっても提案が求められるし、説明だけでは「で?その後は?」と提案を求められる。2010年以降はそういう時代だ。
➽①最低限のアドバイス:どっち向いてる?
プレゼンテーションといっても、コミュニケーションの1つである「伝える」の発展形だ。
なので、コミュニケーションの「伝える」基本を理解しておけば、後は応用なので、そんなにややこしいものでもない。
伝える基本中の基本といえば、「気持の向き」だ。どっちを向いているかの話。
説明するにしても、発表するにしても、提案するにしても、それを相手に届くように、そして受け取れるように投げているかということだ。(コミュニケーションはキャッチボールと聞いたことあるでしょ?)
●伝えることが多く、時間がない場合、早口になる➽気持は自分が全てを言い切ることに一生懸命で相手は不在になってしまう。
●失敗しないように失敗しないようにと声が小さくなる➽気持はこの時間が早く終わって
ほしい気持が増大し、相手は不在になってしまう。
●そもそも人前に出て話すこと自体が苦手なのでいやいややっている➽とりあえず説明しておけばいいと割り切ってしまうと、これも相手が不在になる
プレゼンテーションでも同じで、相手に伝える気持がどこかで消えてしまっているのだ。
まるで満員の通勤電車の網棚にカバンと一緒に預けた気持を置き忘れてきたかのようにだ。
まるで満員の通勤電車の網棚にカバンと一緒に預けた気持を置き忘れてきたかのようにだ。
しっかりと相手に、それが複数人であっても、相手に伝えようという気持がなければ、どれだけ練習しても届かない。
例えば、常に立板に水のように話す人はたくさんいる。プレゼンでも、その後の質疑応答でも、適切な言葉を使い、適当なスピードで話す人だ。まるで滞りがなく、理路整然と話してくれる。その時はその話術に惹かれてものすごく納得する。
だけど後から思い出そうにも、「はて?何を話していたんだっけ?」と思いだせないことも多い。メモを見ても、なんでこのメモが残っているのかさえ思い出せないこともある。
この例はプレゼンテーションスキルは素晴らしいけど、やはり相手に届けようという気持が薄いのだろう。いわゆる「悦に入る」というやつだ。
自分のプレゼンテーションを振返り、そのコンテンツに問題がないのであれば、伝え方とその方向を確認し、修正をかければ良いだろう。
➽②表現を確認する
これは相手に投げるボールそのものを見直すことだ。
ボールはボールでもソフトボールが投げられてくると思っている人のところへ、硬球が飛んできたら、まず受け取れない。
業界用語や社内用語がそのまま出てないか?➽これほど定義が頑固で曖昧なものはない。口頭では通じても、プレゼンとなれば別だ。これは必ず通常の言葉に置き換えておく。
専門用語もできるだけ開くようにする。
要するに「むずかしいことをわかりやすく」ということになってしまうが、本当はこれだけではない。それについては後で触れる。
➽③シナリオを作成する
プレゼンシナリオづくりの方法は2つある。
ひとつはプレゼンテータが話すのを得意としている場合だ。
上記の気持の向き、表現に問題がないのであれば、シナリオをつくる。
内容によって、適切なテンプレートに合わせて、シナリオをつくれば良い。
プレゼンスライドは「覚えてもらいたい」ところを虫食いにしておく工夫を凝らすなど、この手の人は、何をやってもできるので、アドバイスするまでもないだろう。
強いていえば、プレゼンテータ自身が、ユーモアさを漂わせていれば完璧だ。
まじめなだけではつまらないと言われて終わるだけだ。
さて、もう一つは、プレゼンテータが話すのを苦手としている場合だ。
この場合、話すこと自体はスライドに任せて、補足だけを入れていく。
最初に挨拶をした後、「まず、御覧ください」といって、ある程度、時間を取る。
適当なところで、補足を入れ、スライドをめくっていく。
これのテンポをどこかで一定に保つ。
問題は、最初の「まず、御覧ください」といえる勇気が持てるかどうかだ。
要は聞いている側に「ああ、この人、棒読み、丸読み」と思われてしまったら、相手とコミュニケーションできていないということだ。
だから覚えておきましょうという話になるのだろう。
TEDxのようなレベルを求められない限り、覚えておく必要はないだろう。
覚えておいたことを思い出しながら話すよりも、相手に届ける、相手とコミュニケートすることにチカラを注いだ方がよほどましだ。
もちろん、覚えておくことにこしたことはない。
➽④人とは違う着眼点
端的に表すと、どのようなポジションでモノを見ているか?ということだ。
本来は表現のところに入る要素であるのだが、これだけ情報が飛び交っている時代だ。
同じことを考えている他者はいるかもしれない。いや必ずいる。
そんななかでの独自性。オリジナル性というやつだ。
独自の着眼点を見つけることは、大変だろうが、どこにでもあるものは避けたいところだ。
独自の着眼点を見つけることは、大変だろうが、どこにでもあるものは避けたいところだ。
ビジネスの場合は、従来当たり前と言われていたことを「なんで?」「ほんと?」「それで?」と深堀り・発散していけば、自分でも気付いていなかった着眼点にいきつく場合は多々ある。
例えば、顧客視点で書かれた提案書には、「勢い」がある。
タイトルがこんな感じだ。
よくある表紙のタイトル「オリジナル着眼点の発見トレーニングのご提案」
よくある表紙のタイトル「オリジナル着眼点の発見トレーニングのご提案」
顧客視点のタイトルは「この手があったか!人とは違う着眼点を発見しよう」
これは実際、私がやったものだ。
中味は変えず、表紙だけ変えて、2つを並べて、どちらかを選んでもらうと、10人中10人が最初に後者を選んだ。
それこそ表紙で勝負をあらかたつけられる場合もある。
使われている言葉もターゲットが使いそうな言葉が散りばめられている。
➽⑤基本的なことを徹底的に練習する
大きな本屋だと、本棚の一段だけでプレゼンテーションのスキル本が数多ある。
書いてあることで大事なことは、どれも同じだ。書き方や順番が違うだけだ。
だけど基本的なことなので、しっかり身につけておくことはお勧めする。
文体や見た目が自分の好みに合うものを買い、読み込み、それに書いてある通り、徹底的に練習すれば良い。この時都合の良い解釈をせず愚直にそのままを練習することだ。
練習して、実践して、反省して、直して、練習して、を繰り返すのみだ。
それだけで、絶対にうまくなる。本当にうまくなる。うまくならないわけがない。
私が指導した人で徹底的にやった人で下手なままな人はいない。これは断言できる。
なぜなら練習以上のチカラを本番で発揮できるわけがないからだ。。
なぜなら練習以上のチカラを本番で発揮できるわけがないからだ。。
例え即席であっても、しっかり練習すれば、その瞬間は劇的にうまくなる。
後々続けられるかどうかは本人の問題以外のなにものでもないだろう。
そして、続けられたとしよう。実はここにも落とし穴がある。
いわゆる「慣れ」だ。
伝え方や伝える内容に慣れが出てくると、練習もおざなりになる。
慣れが出てきているにも関わらず、それに気づかず、同じことを同じ様に繰り返す。
いわゆるルーチン化だ。省みることがないルーチン。これは致命的だ。
そのうち小さなミスをしてしまう。
すぐにリカバリできるレベルなのでまだ気づかない。
大きなミスにつながるから気をつけたいところだ。
➽➽そのプレゼンテーションに値段はつけられるか?
(2021.03.01追記)
先日、プレゼンテーションのアドバイス依頼があった。
プレゼンそのものが苦手だという人が多く、頑張って届く言葉を探している人もいるという。なんであれ、少しでも上達したいのであれば、以下は絶対だ。
提案にしろ、発表にしろ、言葉や図を使って表現して、時間をかけて作成するわけだ。
相手に届けば、必ず反応はある。
その反応はあくまでも感謝であり、労いである。批判もあるかもしれない。
それもそれで、至らぬ点としてありがたく受け取ろう。飲み込むかどうかは後で良い。
それもそれで、至らぬ点としてありがたく受け取ろう。飲み込むかどうかは後で良い。
しかし、ビジネスはそこでは終わらない。いやなんらかの利害が発生するのであれば、ビジネスだけとは限らず、「それがなんぼのものですか?」ということを常に問われていることを忘れないようにしてもらいたい。
まずは・・・上記の繰り返しになるが、その基本的なことは何かを知り、身につけることはお勧めする。
プレゼンテーションスキルを伸ばしたいだけなら、書店にいって、ビジネススキル本コーナーに行き、適当に数冊手に取ってみれば、だいたいわかるだろう。
あるいは検索窓に「プレゼンテーション」と入力し、ググってみれば、山のように出てくる。「人を動かすプレゼン」「わしづかみプレゼン」・・・云々。
それで一つ一つ見ていくとわかると思うが、たいてい同じことが書かれていて、大きな違いはない。
この記事は、2014年8月25日に書いたものを大幅に焼き直したものです。